1.沖縄県の陸上生物相の特徴
沖縄県は、日本列島の南西部に位置し、南北約400km、東西約1000kmという広い海域に点在する大小160の島々からなる島しょ県です。沖縄県の陸地面積は、日本全体でみると、その1%にも達しません。しかし、沖縄県の陸上生物相には、面積のわりに種数が多く、また固有性が高いという特徴があります。県内の島々が亜熱帯の気候下にあること、そして島々が独自の地史を経てきていることがそのおもな理由です。たとえば沖縄県に生育する維管束植物は約1750種で、面積あたりの種数は日本本土の約45倍となります。
2.外来種問題の現状
島しょでは、一般に外来種が侵入して定着しやすい傾向があります。同時に、その生態系は規模が小さいことから、外来種の侵入をはじめとした環境の負荷に対し、より影響を受けやすくなります。
沖縄県には、すでに数多くの外来種が侵入・定着しています。その数は確認されているものだけでも植物で 700種以上、脊椎動物で 150種以上、無脊椎動物で500種以上に達しています。そのうちの一部である侵略的な外来種が、沖縄県内各地で問題を引き起こしています。以下はその例です。
①捕食・競合
- 肉食性の外来種が在来種を捕食する可能性がある(例:フイリマングース)
- 植食性の外来種が植物の組成を変えて、景観も変えてしまうおそれがある(例:ノヤギ)
- 競争力の高い外来種は、餌や生息場所を巡って在来種と競合し、在来種を被圧するなどの影響を及ぼすことがある(例:ツルヒヨドリ・アメリカハマグルマ)
②農業被害
- 農作物を食害する(例:ニホンイノシシ・イノブタ・シロガシラ)
- 雑草として牧草地に侵入する(例:ムラサキカタバミ)
③人の生命・身体への被害
- 寄生虫や感染症を媒介する (例:アフリカマイマイ等) (例:アフリカマイマイ等)
- 人が咬まれてケガをする(例:タイワンハブ)
④遺伝子汚染
- 在来種と交雑して雑種を形成し、在来種集団の遺伝的特徴を変質させる(例:沖縄島でリュウキュウヤマガメの生息地に放されたセマルハコガメ)
3.沖縄県の取り組み
世界自然遺産の候補地を含む貴重な沖縄の自然を守り、次代に伝えていくためには、対策をとる必要があります。沖縄県では、外来種対策指針と対策外来種リスト(平成30年)、そして外来種対策行動計画(令和2年)と、侵略的な外来種の脅威に対し、県として責任をもって対処していくための体制を整備してきました。
- 沖縄県外来種対策指針
目指す将来像
沖縄県への侵略的外来種の侵入が予防され、すでに定着している侵略的外来種については対策が実施され、外来種による生態系等への影響が最小限に抑えられ、人の生命・身体、農林水産業への被害が防止されるとともに、生物多様性が保全されている状態。
実施する施策
- 対策をとるべき外来種のリストを作成し、対策の優先順位を決定する(→沖縄県対策外来種リストを策定)
- 外来種に対する具体的な行動計画を策定する(→沖縄県外来種対策行動計画を策定)
- 重点対策種に対する防除、重点予防種に対する定着予防、そして産業管理外来種の使用者に対する適切な管理を促すための啓発を進める(→沖縄県外来種対策行動計画に基づき実施中)
- 外来種対策のための体制を構築する(→沖縄県外来種対策行動計画に基づき実施中)
- 外来種対策の普及活動を行う(→沖縄県外来種対策行動計画に基づき実施中)
沖縄県対策外来種リスト
生態系への影響が大きいと考えられる外来種について、5種類(重点対策種・対策種・重点予防種・予防種・産業管理外来種)に区分したうえで、委員や専門家等の助言等を踏まえてリスト化しました。リストは毎年更新し、3年ごとに見直しを行います。
最新版のリストはこちら
防除対策外来種(重点対策種・対策種)
すでに県内に定着している、わたしたちの生活や生態系への影響が大きい外来種(フイリマングースなど)
定着予防外来種(重点予防種・予防種)
県内に未定着であり、定着した場合の生態系への影響が大きい外来種(ヒアリなど)
産業管理外来種
産業または公益的役割において重要だが、適正な管理が必要な外来種(セイヨウミツバチなど)
沖縄県外来種対策行動計画
「沖縄県外来種対策指針」において定めた将来像を実現するための、具体的な行動プランを定めました。
①対策基盤の整備
県民に対する外来種についての普及啓発、県内外における外来種の動向についての情報収集および情報発信、そして外来種に対処していくための人材育成と技術開発に取り組みます。
②外来種の侵入防止
普及啓発を柱に外来種の逸出防止を進め、また非意図的な外来種の侵入を監視するモニタリング体制を構築していきます。
③外来種の防除の推進
- 重点予防種について、早期発見と防除の計画を定めました。(→重点予防種 早期発見・防除計画)
- 重点対策種について、防除の計画を定めました。(→重点対策種 防除計画)
- 産業管理外来種について、適正な管理を促すための計画を定めました。(→産業管理外来種の適正管理計画)
農業や緑化などのため利用される外来種の植物の中には、野外に定着して在来の生態系に影響をおよぼす種も含まれます。そうした植物の逸出を防止するため、適切な利用方法のガイドラインを作りました。(→外来植物の適正利用方針)
④計画の推進と見直し
行動計画は、沖縄県環境部が県庁内各部局と連携し、有識者等からの助言を得ながら進めていきます。具体的な指標をもとに進捗状況を確認しつつ、定期的に計画の見直しを行っていくことを定めました。
4.沖縄県指定外来種
沖縄県では、密猟や外来種などの脅威から希少種を守るため、2019年10月31日に希少種の捕獲禁止や外来種の飼養の規制などの内容を定めた沖縄県希少野生動植物保護条例を制定しました。条例では、希少野生動植物に係る生態系に被害をおよぼす(または、およぼすおそれのある)動植物を「指定外来種」として指定し、被害の防止に努めることとしています。
条例による規制の対象区域(指定区域)では、指定外来種を野外に放ったり、植えたり、まいたりしてはいけません。また、指定外来種を飼養、栽培、保管する場合には、届出が必要です。申請方法等については、沖縄県公式HPをご覧ください。