外来種図鑑

沖縄県は、県内の生態系や、県民の生活・社会活動への影響が大きい
以下の外来種について、重点的に対策をとっています。

タイワンハブ

Protobothrops mucrosquamatus

分類:
爬虫綱 有隣目 ヘビ亜目 クサリヘビ科
和名:
タイワンハブ
学名:
Protobothrops mucrosquamatus
英名:
Taiwan Habu
原産地:
インド東部~中国南部、台湾
指定項目:
重点対策種(沖縄県)、特定外来生物・緊急対策外来種(環境省)

※本種は特定外来生物のため、移動や飼育は禁じられています。


形態・生態

体長25~130 cm。頭部は細長い三角形です。地色は灰黄色~黄褐色。胴部の斑紋は暗褐色ではっきりしており、背の中央に前後方向に(しばしばつながってジグザグ状に)並びます。側面にはより小さい斑紋が、同じく一列に並びます(自然環境研究センター編 2019)。胴部背面の鱗の後端は、強く突出します。腹板数は沖縄島産のもので203~219(勝連ほか 1996a; 田原・松井 2010)です。メスは頭胴長70 cm以下、オスは50 cmあまりで性成熟します。6月に3~15個の卵を産みます。カエル類・トカゲ類・鳥類および小型哺乳類(コウモリ類を含む)を食べます。


沖縄県への侵入経路と分布

本種は自力での分布拡大に加え、資材等に紛れて運ばれることがあるようです(沖縄県衛生環境研究所 2020)。うるま市の製糖工場で発見された例では、収穫されたサトウキビに紛れて持ち込まれたと考えられています(寺田 2011)。沖縄島ではすでに複数の地域で定着していることから、運ばれた先で新たに繁殖集団を形成し、さらに分布域を広げているようです。

現在の分布

沖縄島中北部(名護市から読谷村にかけて)に定着しています。今後やんばる地域や離島に侵入するおそれがあります。

2019年に、東村有銘と名護市源河で、それぞれ1個体が捕獲されました。2021年には、大宜味村津波で1個体が捕獲されています。

タイワンハブの分布域の拡大と近年の捕獲記録

生態系と私たちの生活への脅威

①生態系に対して

とくにやんばる地域に侵入した場合、希少種をはじめとする在来動物を捕食することが強く懸念されています(戸田・吉田 2005)。実際に、読谷村ではワタセジネズミと外来種のシロアゴガエルを捕食していたことが報告されています(田原・松井 2010)。また、在来種のハブとの交雑個体が発見されています(寺田 2011)。

①私たちの生活に対して

人の生活域周辺に生息するため、咬症被害が発生しています(西村 2002;戸田・吉田 2005 )。毒の強さはハブと同等とされ、動きは敏捷で、在来のハブ類よりも攻撃的です。台湾のとくに中南部では、本種が最も多くの咬傷例をもたらす毒ヘビとなっています(杜 2004)。


沖縄県の対策とその成果

沖縄県環境衛生研究所では、人への咬症被害を予防あるいは軽減するため、トラップによる駆除など、防除方法などを研究してきました。各市町村でも、トラップを設置して捕獲に努めています。タイワンハブが生態系へ悪影響を与える懸念があることから、沖縄県環境部でも、本種を重点対策種に指定して、トラップの設置などによる駆除を進めています。


県民の皆様ができること

① 移動させない

タイワンハブは自力でも移動しますが、とくに工事・農業等の資材などにまぎれて長距離を運ばれると考えられています。生息地から物資を移動させる際は、ヘビがまぎれこんでいないか、確認するようにしてください。

② 目撃情報を提供する

対策を実施するうえで、侵入を早期に発見することは重要となります。タイワンハブらしきヘビを見かけたら、写真と共に、いつ?どこで?何匹?といったような情報を、本ホームページの外来種情報フォームにお寄せください。


ギャラリー

引用文献
  • 勝連盛輝・西村昌彦・香村昴男. 1996a. 沖縄本島において本来の分布地とは異なる地域で採集されたヘビ. 沖縄生物学会誌 34: 1-7.
  • 勝連盛輝・西村昌彦・長田悦朗・大浜勝. 1996b. 業者により 大量に沖縄へ持ち込まれた生きたヘビの数. 沖縄衛生環境研究所報 30: 133-136.
  • 寺田孝紀. 2011. 沖縄島に定着したタイワンハブ・サキシマハブ・タイワンスジオの生息状況と対策. 爬虫両生類学会報 2011: 161-168.
  • 西村昌彦. 2002. タイワンハブ. 日本生態学会編, 外来種ハンドブック. P. 102. 地人書館, 東京.
  • 田原義太慶・松井創. 2010. 読谷村でのタイワンハブ初捕獲例およびその胃内容物. Akamata 21: 29-32.
  • 戸田光彦・吉田剛司. 2005. 爬虫類・両生類における外来種問題. 爬虫両棲類学会報 2005: 139-149.
  • 杜銘章. 2004. 蛇類大驚奇. 遠流出版事業股份有限公司, 台北.