外来種図鑑

沖縄県は、県内の生態系や、県民の生活・社会活動への影響が大きい
以下の外来種について、重点的に対策をとっています。

タイワンスジオ

Elaphe taeniura friesi

分類:
爬虫綱 有鱗目 ヘビ亜目 ナミヘビ科
和名:
タイワンスジオ
学名:
Elaphe taeniura friesi
英名:
Taiwan beauty snake
原産地:
台湾
指定項目:
重点対策種(沖縄県)・特定外来生物・緊急対策外来種(環境省)

※本種は特定外来生物のため、移動や飼育は禁じられています。


形態・生態

沖縄島のものでは全長が平均で170 cm、最大で258 cmに達します。体色は灰黄色~黄褐色で、目の後ろに黒い明瞭なスジ、尾に黒いスジが入ります。雌は頭胴長 120 cm、雄は105 cmで性成熟します。成熟した雌は6月に卵を5~16個産みます。孵化時の幼体の全長は40~50 cmで、餌が十分な場合、9か月で頭胴長120 cmに達します(仲地 1989; 西村 2002)。人里から森林まで幅広い環境に生息し、昼行性で動きはすばやく、よく木に登ります。地上や樹上で、おもに哺乳類や鳥類を食べます(西村 2002)。


沖縄への侵入経路と分布

本種が定着した時期やその経路は不明ですが、沖縄島中部では1970年代末には野外で見つかっています。沖縄ではかつて、展示や食用・薬用・皮革用としてタイワンスジオを多数輸入していたため、その一部が逃げ出したと考えられます(勝連ほか 1996a, 1996b)。2001年の時点で、本種は少なくとも北は恩納村・石川市(現うるま市)の中部から、南は沖縄市・嘉手納町に至る南北におよそ15㎞の範囲で発見されています(西村 2002)。

現在の分布の北限は、恩納村瀬良垣や喜瀬武原周辺とみられています。また、2019~2020年にはこれまでの分布域から遠く離れた名護市の4か所や、沖縄島南部の豊見城市平良で各1個体が捕獲され、2021年3月には国頭村辺士名でも1個体が捕獲されています。これらの個体は、資材などに紛れて、車両によって遠くまで運ばれたものと考えられています。また2020年には福岡県で、沖縄から送られたコンテナ内より1個体が発見されています(江頭 2021)。

大宜味村と東村の境にある玉辻山では、2006年に別亜種のタイリクスジオElaphe taeniura taeniura(中国に分布)が捕獲されています。


生態系への脅威

やんばる地域に侵入した場合、希少種をはじめとする在来種(とくにネズミ類や鳥類)を捕食することが強く懸念されています(佐々木 1995; 戸田・吉田 2005)。本種は日中に獲物を探します。沖縄島にはこうした大型ヘビがもともといないことから、在来種は回避の仕方を知らず、たやすく食べられてしまう可能性があります(佐々木 1995; 戸田・吉田 2005)。


沖縄県の対策

沖縄県では、本種を重点対策種に指定し、沖縄県外来種対策行動計画に従ってトラップの設置によるタイワンスジオの駆除を行ってきました。また、分布状況の調査のため平成30・31・令和4年度に買い取り調査を実施しています。

※環境省事業でも平成23・24年度に買い取り調査を実施しています。


県民の皆様ができること

① 移動させない

タイワンスジオは自力でも移動しますが、とくに工事等の資材などにまぎれて長距離を運ばれると考えられています。生息地から物資を移動させる際は、ヘビがまぎれこんでいないか、確認するようにしてください。建築資材やコンテナなどは、とくに注意が必要です。

②目撃情報の提供

対策を実施するうえで、侵入を早期に発見することは重要となります。タイワンスジオらしきヘビを見かけたら、写真と共に、いつ?どこで?何匹?といったような情報を、本ホームページの外来種情報フォームにお寄せください。

とくに以下の地域からの情報を求めています

・沖縄本島(名護市以北)
・沖縄本島以外の島々


ギャラリー

引用文献
  • 江頭幸士郎. 2021. 福岡県で捕獲されたタイワンスジオ(Elaphe taeniura friesi)およびシロアゴガエル(Polypedates leucomystax)について. 爬虫両棲類学会報 2021: 59-62.
  • 勝連盛輝・西村昌彦・香村昴男. 1996a. 沖縄本島において本来の分布地とは異なる地域で採集されたヘビ. 沖縄生物学会誌 34: 1-7.
  • 勝連盛輝・西村昌彦・長田悦朗・大浜勝. 1996b. 業者により 大量に沖縄へ持ち込まれた生きたヘビの数. 沖縄衛生環境研究所報 30: 133-136.
  • 寺田孝紀. 2011. 沖縄島に定着したタイワンハブ・サキシマハブ・タイワンスジオの生息状況と対策.  爬虫両生類学会報 2011: 161-168.
  • 仲地明. 1998. 飼育下におけるタイワンスジオ幼蛇の成長と食物消費. Akamata 6: 13-14.
  • 西村昌彦. 2002. タイワンスジオ. 日本生態学会編, 外来種ハンドブック. P. 100. 地人書館, 東京.
  • 大谷勉・寺田考紀. 1993. 高田爬虫類研究所沖縄分室に持ち込まれたタイワンスジオ. Akamata 9: 10.
  • 大谷勉. 1995. 北中城村にて保護されたタイワンスジオ. Akamata 14: 12.
  • 大谷勉. 1998. 高田爬虫類研究所沖縄分室に持ち込まれたタイワンスジオ (II). Akamata 14: 12.
  • 佐々木健志. 1995. 沖縄島から採集されたタイワンスジオ Elaphe taeniura taeniura(有鱗目:ナミヘビ科)の幼蛇.沖縄生物学会誌 33: 65-67.
  • 戸田光彦・吉田剛司. 2005. 爬虫類・両生類における外来種問題. 爬虫両棲類学会報 2005: 139-149.