外来種図鑑

沖縄県は、県内の生態系や、県民の生活・社会活動への影響が大きい
以下の外来種について、重点的に対策をとっています。

サイカブト(タイワンカブトムシ)

Oryctes rhinoceros

分類:
昆虫綱 コウチュウ目 カブトムシ科
和名:
サイカブト(タイワンカブト
学名:
Oryctes rhinoceros
英名:
Coconut rhinoceros beetle
原産地:
南アジア~東南アジア
指定項目:
重点対策種(沖縄県)

南・東南アジア原産で沖縄県内に広く定着している外来のカブトムシです。ヤシ類の害虫として知られ、特に大東諸島では、代表的植生であるビロウ林において食害により大きな影響が出ています。また大東諸島固有のヒサマツサイカブトとの競合も懸念されています。


形態・生態

体長は 33~47mm、暗褐色で光沢があり、雌雄ともに頭部に1本の短い角があります。夜間に活動し、ヤシ類、サトウキビ、リュウゼツラン、ソテツなどの植物を摂食します。雌は堆肥等の腐植質や腐朽したヤシの中などに産卵し、幼虫はこれらの腐植質を食べて成長します。雌 1 個体の産卵数は個体によって幅があり、飼育個体では 26~121 個の産卵が確認されています。成虫は冬には少なくなりますが、年間を通して成虫および各発育段階の幼虫がみられるため、繁殖は周年可能であると考えられます。卵は白色で、3.5mm 前後の楕円体になります。幼虫は白色で、1 齢幼虫で体長 7~18mm、終齢幼虫である 3 齢幼虫で 45~70mm になります。沖縄県における飼育個体では、卵から成虫までに 251~316 日、成虫の生存期間は平均で雄 94.7 日、雌 82.1 日、最長で 146 日という報告があります。

サイカブトとヒサマツサイカブトの区別点

南大東島には近縁種のヒサマツサイカブトが生息していますが、ヒサマツサイカブトの近年の確認事例はごくわずかしかありません。ヒサマツサイカブトはサイカブトに比べ頭部に厚みがあり、上翅の点刻がサイカブトより細かいなどの特徴がありますが、小型個体では識別は困難です。


分布

原産地:南アジア~東南アジア
県内の分布:沖縄島、伊江島、古宇利島、水納島、久米島、粟国島、宮古島、多良間島、波照間島、石垣島、西表島、与那国島、南大東島、北大東島、魚釣島、久場島

1921 年に石垣島で確認され、これが日本における初確認とされています。西表島、宮古島で 1970 年、与那国島で 1971 年、沖縄島で 1974 年に発生が確認されました。石垣島、沖縄島へは台湾から輸入されたヤシ類とともに持ち込まれたと考えられており、その他の離島へは石垣島、沖縄島から苗木とともに持ち込まれたと考えられています。


生態系等への影響

大東諸島において、固有種であるヒサマツサイカブトとの競合、またダイトウビロウの食害により大東島の生態系に与える影響が懸念されています。

ヒサマツサイカブトは、沖縄県版レッドデータブックにて絶滅危惧 IA 類に指定されており、近年の確認事例はごくわずかしかありません。

サイカブトの成虫はヤシ類の葉柄の基部に侵入して成長点まで摂食し、ひどい場合は枯死させます。枯死に至らなかった場合でも、葉柄が著しく傷つけられたり、葉先がハサミで切り取られたようになったりします。また樹勢が衰えた結果、台風などの影響を受けやすくなります。沖縄県では、ビロウやその他のヤシ類、サトウキビ、パイナップル、アダン、ソテツなどで被害が出ています。特に大東諸島では、島を代表する植物であるダイトウビロウの食害がひどく、枯死木も発生しています。大東諸島のダイトウビロウ林は、ダイトウコノハズクやダイトウオオコウモリなどの生息地として重要であるとともに、防風林、防潮林として島民の生活の維持のためにも不可欠です。

成虫に食害されたダイトウビロウ.葉先が切り取られたようになる.

沖縄県の取り組み

大東諸島においては、地域の在来生態系を支える代表的植生であるダイトウビロウへの食害が深刻であり、対策が必要とされています。大東諸島のダイトウビロウ林は、ダイトウコノハズクやダイトウオオコウモリ、絶滅が危惧されるヒサマツサイカブトの生息地として重要であるとともに、防風林、防潮林として機能し、島民の生活の維持のためにも不可欠です。

沖縄県ではビロウ林への被害を低減するため、モニタリングの実施と、継続的な捕獲および発生源の除去を実施してサイカブトの個体数を減少させ、低密度状態を維持することを目標とします。