外来種図鑑

沖縄県は、県内の生態系や、県民の生活・社会活動への影響が大きい
以下の外来種について、重点的に対策をとっています。

セイヨウミツバチ

Apis mellifera

分類:
ハチ目ミツバチ科
和名:
セイヨウミツバチ
学名:
Apis mellifera
英名:
European honey bee
原産地:
アフリカ、ヨーロッパ~中央アジア
指定項目:
産業管理外来種(沖縄県)

形態・生態

体長は、女王バチ15~20mm、雄バチ15~17mm、働きバチ12~14mm です。体色は品種によって異なりますが、一般的には黄褐色~黒褐色で、腹部に特徴的なしま模様があります。攻撃性は低くおとなしいハチですが、刺激すると刺されることもあるので注意が必要です。雄には毒針はありません。
花の蜜や花粉を集め、後肢に花粉団子をつけていることがあります。花に対する選り好みはあまりなく、さまざまな花を訪れます。
活動期間は地域により異なりますが、温暖な沖縄では一年中活動しています。野外では、樹洞のような閉鎖空間に好んで営巣しますが、樹木の枝などに巣を作ることもあります。また、市街地でも営巣することがあります。
群が発達し、営巣空間が十分ではなくなると、分蜂(巣分かれ)が起こります。王台と呼ばれる女王バチ専用の育房が作られ、そこに産みつけられた卵が成長してくると、元の女王バチは多数の働きバチとともに巣を飛び出します。飛び出したハチたちはいったん巣の近くの木などに集結します。そこから偵察のハチが飛び立って、新しい巣を作る場所を探します。適当な営巣場所が見つかれば、群はそこに向かって一斉に飛び立ち新たな巣作りを始めます。営巣場所を見つけることができなかった場合、同じ場所にとどまりそこで露出した巣を作ってしまうこともあります。
分蜂の際、残された巣では新女王が誕生します。普通、王台は複数作られ、群が小さい場合は最初に産まれた女王が他の王台に穴をあけ中の女王を刺殺してしまいます。群が大きい場合、引き続き分蜂が起こることもあります。
分蜂は飼育下の巣箱でも起こることがあり、こうした分蜂群が野外に定着すると考えられます。


県内での利用・確認状況

県内各地で利用されており、沖縄島、西表島では野外営巣が報告されています。


想定される影響

沖縄県では、沖縄島や西表島でセイヨウミツバチの野外営巣が報告されています。やんばる固有の希少鳥類であるノグチゲラの古巣や自然樹洞、樹の枝の開放巣、鳥の巣箱における営巣が確認されています。ノグチゲラの古巣や自然樹洞は、本来ノグチゲラやヤンバルテナガコガネ等の希少動物を含むさまざまな在来生物によって利用されるべき資源であり、セイヨウミツバチの営巣によるこれらの在来生物への影響が懸念されています。
また、セイヨウミツバチは送粉能力が非常に高く、在来植物より外来植物を好む傾向があるため、外来種同士の相利共生関係になっている可能性があると指摘されています。小笠原諸島では、セイヨウミツバチが優占することによる在来送粉系の撹乱が指摘されており、実際に固有種のシマザクラの結果率が低下していることが報告されています。同様の影響が、沖縄県においても生じている可能性があります。
本州などでは在来種のニホンミツバチと競合していると考えられていますが、沖縄県には在来のミツバチ類は生息していません。ただし、在来のその他のハナバチ類と競合する可能性があります。


沖縄県の対策

① 保全上重要な地域の野外定着個体群の抑制

セイヨウミツバチの分蜂群を捕獲・駆除するため、林内における捕獲器の設置試験を行います。試験により野外定着個体群の駆除手法を確立し、保全上重要な地域における野外個体群を抑制します。

 

② 養蜂場からの分蜂群の逸出を阻止するための管理方法の普及

養蜂場から逸出した分蜂群が野外に営巣することを阻止するため、分蜂の防止や分蜂群の捕獲のための手法を確立し、県内養蜂家に普及します。

 

③ セイヨウミツバチの適切な管理を促すための普及啓発

セイヨウミツバチによる生態系への影響はほとんど知られていません。問題意識を持ち、適切な管理を促すため、養蜂家を中心に普及啓発を行います。


適正管理の方法

セイヨウミツバチの分蜂を防ぎ、適切に管理を行うためには、まずは定期的な内検を行うことが重要であるとされます。特に分蜂が起こりやすい春は頻繁に内検を実施し、王台を発見したら、取り除くか、もしくは人工分蜂することによって分蜂群の野外への逸出を防ぎます。


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