セイヨウオオマルハナバチ
Bombus terrestris
- 分類:
- ハチ目ミツバチ科
- 和名:
- セイヨウオオマルハナバチ
- 学名:
- Bombus terrestris
- 英名:
- Large earth bumblebee
- 原産地:
- ヨーロッパ
- 指定項目:
- 産業管理外来種(沖縄県)/特定外来生物・産業管理外来種(環境省)
女王バチ、雄バチ、働きバチからなる社会性の昆虫で、全身が毛で覆われています。全体的に黒く、黄色い帯が2本あり、おしりが白いことが特徴です。女王バチ、雄バチ、働きバチに毛色の違いはほとんどありません。体長は、女王バチが 16.8~23.1mm、雄バチは 13.2~16.8mm、働きバチは 11.6~16.2mm です。腹部先端に毒針を持ちます。攻撃性は低くおとなしいハチですが、素手で触ると刺されることもあるので注意が必要です。雄には毒針はありません。
花の蜜や花粉を餌にしており、農業では主にトマトの受粉のために利用されますが、花筒に穴を空けて蜜を吸う盗蜜行動を行うことも知られています。盗蜜では、マルハナバチの体がおしべやめしべに触れないため、受粉は行われません。
野生化している北海道では、主に草地に生息し、土の中に巣を作ります。これまでに、水田や畑の畔、用水路の法面や土手、河川敷、河畔林などで巣が見つかっています。住宅の床下に巣を作っていたという報告もあります。
マルハナバチ類では、一般的に、夏から秋にかけて新しい女王バチが誕生し、雄バチと交尾した後、冬眠します。春になると目覚めて新しい巣を創設し、働きバチを多数産出してコロニーを発達させます。夏から秋に新しい女王バチと雄バチを産むと、女王バチはその一生を終え、コロニーも崩壊します。北海道で野生化しているセイヨウオオマルハナバチも概ねこのような生活史であると考えられます。しかし、海外の比較的温暖な地域では、冬も活動する集団がいることが知られています。
セイヨウオオマルハナバチは潜在的に数 km の飛翔が可能であるとされていますが、野外での実際の採餌探索距離は 625〜782m とされています。
現在、沖縄県内では、主に沖縄島において、トマト栽培に利用されています。
セイヨウオオマルハナバチが野生化している北海道では、餌資源や営巣場所を巡って競合する在来マルハナバチ類が減少しています。また盗蜜による受粉の阻害など、植物への悪影響も指摘されています。沖縄県には在来のマルハナバチ類はいませんが、その他の在来のハナバチ類との競合や、盗蜜による在来植物への影響が懸念されます。
特定外来生物に指定されており、基準を満たしたハウス内でのみ利用が許可されていますが、飼育施設の不備が全国的に指摘されており、沖縄島でも野外で逸出個体が確認されています。
沖縄島では、セイヨウオオマルハナバチの逸出個体の偶発的な確認が報告されていますが、逸出状況が調査されたことはありません。セイヨウオオマルハナバチが利用されている地域において、モニタリング調査を実施し、逸出状況を把握します。また、モニタリングにより、定着の早期発見に努めます。
モニタリング結果等、環境省と適宜情報を共有し、逸出防止のための対策を促進します。
外来種の定着を防ぐには、早期発見・早期防除がきわめて重要です。モニタリングやその他の情報によって野外営巣が確認された場合には、速やかに防除を実施します。
ホームページ、イベント、チラシ配布等を通じて適正管理の必要性等を県民や関係機関へ周知すると共に、発見情報の収集や管理、調査に向けた協力などが得られるように取り組みます。
セイヨウオオマルハナバチを飼育する際には、外来生物法による許可が必要です。さらに、ハウスや管理体制等の条件も定められており、これらが確実に守られていれば、逸出はほぼ防げると考えられます。
しかし、環境省が実施した調査によれば、調査対象の 2~3 割で何らかの不備が見つかったとされています。こうした不備が改善されない場合、許可の取り消しや罰則が適用される場合があります。以下に、施設管理における注意点を列挙します。
天窓、側窓、換気扇など、隙間ができやすいところにも確実にネットを張る。
定期的に点検し、破損はすぐに補修する。
出入りの際に開け放たれ、ハチが逃亡しないように注意する。
巣箱をさらに別の箱や袋などに入れて運ぶ。
巣箱ごとビニール袋にいれて密封し、直射日光に当てておく、あるいは巣箱に熱湯を注ぐなどして確実に処分してから廃棄する。
その他、許可の標識の掲示、許可数量、更新手続等、外来生物法によって定められた条件を遵守する必要があります。