フイリマングース
Herpestes auropunctatus
- 分類:
- 哺乳綱 ネコ目 マングース科
- 和名:
- フイリマングース
- 学名:
- Herpestes auropunctatus
- 英名:
- Small Indian mongoose
- 原産地:
- 東南アジア~南アジア
- 指定項目:
- 重点対策種(沖縄県)/特定外来生物・緊急対策外来種(環境省)
※本種は特定外来生物のため、移動や飼育は禁じられています。
頭胴長25~37 cm、尾長19~29 cm程度で、オスの方が大きくなります。腹部を除いて黒~褐色と黄白色の毛に覆われます。原生林から市街地まで、さまざまな環境に生息します。繁殖期は年1~2回で、一度に1~3頭の子供を産みます。
ハブ対策をおもな目的に、1910年に沖縄島と渡名喜島に放されたものが、沖縄島で生き残って増えました。伊江島や石垣島でもハブ対策やネズミ対策として放されたことがありますが、定着はしなかったと考えられます。県外では、奄美大島(1979年)や鹿児島県本土部(1980年以前)にも定着しています。
県内の分布(赤色):沖縄島
過去に侵入したことがある島(黄色):渡名喜島・伊江島・石垣島
沖縄島では、在来の哺乳類(ワタセジネズミなど)、鳥類(ヤンバルクイナ・ノグチゲラ・ホントウアカヒゲなど)、オキナワキノボリトカゲをはじめとする爬虫類、ハナサキガエルなどの両生類が捕食されています(小倉ほか 2002; 河内・佐々木 2002)。
糞・尿を通じて、レプトスピラ菌の感染源となります。
沖縄県ではやんばる地域の希少動物を守るために、2000年度から環境省と分担して、沖縄島北部でマングースの駆除をおこなってきました。カゴ罠に加え、より効率的な筒罠(捕殺式の罠)を併用し始めた2008年度以降、マングースの分布域を大幅に縮小させてきています。
2005年度以降は「マングース北上防止柵」を3つ設置し、柵以南の地域からのマングースの侵入を防ぐとともに、柵で囲われたエリア内での徹底的な捕獲を行っています。第一北上防止柵以北、第1バッファーゾーン(第一北上防止柵~第二北上防止柵)、第2バッファーゾーン(第二北上防止柵~第三北上防止柵)と区分し、第一柵以北での防除は環境省が、バッファーゾーン以南での防除は沖縄県が担当しています。
沖縄県が担当するこれらの地域での駆除は、より以北の地域へのマングースの侵入を食い止めるために重要です。複数の種類の罠に加え、探索犬も導入して駆除を行っています。
2024年現在、この地域では、1,400台程度のわなが常時稼働しています。CPUE(捕獲努力量あたりの捕獲数)は順調に減少しており、2022年度には、1年を通じての捕獲数が0頭となりました。現在は、残存・流入個体の排除を目指した対策を行っています。
第1バッファーゾーンへのマングース流入対策として、2017年度からこの地域でも捕獲を開始しました。2024年現在、この地域では、2,300台程度のわなが常時稼働しています。CPUEは概ね減少傾向で、第二北上防止柵付近で捕獲される個体が少なくなってきてはいますが、未だ多数のマングースが捕獲される状況のため、引き続き捕獲を継続し、マングースの低密度化を達成する必要があります。
この地域は、当初は沖縄県も対策を行っていましたが、現在では環境省が担当しています。希少種の多く生息する地域であるため、この地域からのマングースの完全排除を目指しています。これまでの駆除により、マングースの捕獲努力量あたりの捕獲数は着実に減少しています。また、マングースの確認地点は、おおむね地域の南部に限られるようになってきています。
現在、第二北上防止柵(塩屋-平良)よりも北側では、マングースの生息数が少なくなっています。この地域においてマングースを目撃した際には、問い合わせフォームから情報提供をお願いします。
第一北上防止柵(塩屋-福地)よりも北側で目撃した場合には、環境省やんばる野生生物保護センターへお知らせください。
- 第3期沖縄島北部地域におけるマングース防除実施計画
- 河内紀浩・佐々木健志. 2002. 沖縄島北部森林域における移入食肉目(ジャワマングース・ノネコ・ノイヌ) の分布及び食性について. 沖縄生物学会誌 40: 41-50.
- 国立環境研究所. 2011-2020.フイリマングース. 侵入生物データベース.
- 小倉剛・佐々木健志・当山昌直・嵩原建二・仲地学・石橋治・川島由次・織田銑一. 2002. 沖縄島北部に生息するジャワマングース(Herpestes javanicus)の食性と在来種への影響. 哺乳類科学 42: 53-62.
- 自然環境研究センター. 2019. 最新日本の外来生物. 平凡社, 東京.
- やんばる野生生物保護センター「ウフギー自然館」HP
- Watari, Y., Takatsuki, S. & Miyashita, T. Effects of exotic mongoose (Herpestes javanicus) on the native fauna of Amami-Oshima Island, southern Japan, estimated by distribution patterns along the historical gradient of mongoose invasion. Biological Invasions 10: 7-17.