オオヒキガエル
Rhinella marina
- 分類:
- 両生綱 無尾目 ヒキガエル科
- 和名:
- オオヒキガエル
- 学名:
- Rhinella marina
- 英名:
- Cane toad、Marine toad、Giant toad
- 原産地:
- 中米~南米北部
- 指定項目:
- 重点対策種(沖縄県)/特定外来生物・緊急対策外来種(環境省)
※本種は特定外来生物のため、移動や飼育は禁じられています。
中米~南米北部原産で頭胴長9 ~15 cm(最大24 cm、1.3kg) の大型のカエルです。耳の後ろに発達した耳腺(毒の分泌線)を持ち、幼生にも毒があります。
カエルとしては乾燥に強く、成体は、河川や水たまりなどの淡水域だけでなく、公園、住宅地、サトウキビ畑などの幅広い環境に生息します。昆虫類から小型の脊椎動物まで大規模に捕食します。
周年繁殖し、非常に強い増殖率を持ちます。池や一時的な水たまりなどの止水や、ごく緩やかな流れの河川などの淡水域に産卵します。1個体のメスが 8,000~25,000 個の卵を産みます。ひも状の卵塊から数日内に孵化したオタマジャクシは、1~2 ヶ月程度で変態・上陸し、孵化後約半年で性成熟します。
寿命は、数年から十数年程度と考えられます。オスは「ボボボ・・・」と鳴きます。
原産地は中米から南米北部です。サトウキビの害虫駆除のため、西インド諸島やハワイ、オーストラリアなどに持ち込まれて定着しています。国内では小笠原諸島に生息しています。
県内では、石垣島と北大東島・南大東島で定着しています。過去に発見された沖縄島と鳩間島の個体群は根絶したと考えられています。また、西表島、小浜島および与那国島では、過去複数回にわたって発見・駆除がなされていますが、定着は確認されていません。
北大東島・南大東島・石垣島においては、サトウキビ畑の害虫駆除を目的として持ち込まれたものが、その後の分布拡大したと考えられています。鳩間島には教材として持ち込まれました。西表島で発見されたものは、工事用の資材などに紛れて石垣島から運ばれたと考えられています。
※在来種であるミヤコヒキガエルは、宮古諸島に分布し、国内由来外来種として大東諸島に分布しています。
- 沖縄島(浦添市):2011年に発見、約700個体を捕獲し、2017年までに根絶
- 沖縄島(那覇新港):2019年に1個体を発見・駆除、2023年に6個体を発見・駆除
- 鳩間島:1998年に発見、2005年までに根絶
- 小浜島:2023年に1個体を発見、2024年に1個体を発見・駆除
- 西表島:2000年に発見、2007年までに駆除、2017年および2020年にも発見・駆除
- 与那国島:2001年、2011年、2013年および2021年に発見・駆除
カエル類としては大型になる高次捕食者であり、幅広い食性を示すこと、様々な環境を利用すること、高い増殖率で個体数が急激に増えることなどから、捕食による在来動物や生態系への影響は非常に大きいと考えられます。石垣島では、コガタノゲンゴロウやヤエヤマネブトクワガタなどを捕食していたことが報告されています(八重山農林高等学校生物部 2002; Kidera et al. 2008)。
また、餌資源や繁殖場所をめぐる在来カエル類との競合も懸念され、とくに幼生の水中生活期には、資源量が限られている水域における競合や、成長阻害が生じると考えられています。
耳腺の分泌物には、心臓に作用するステロイド系の強毒が含まれることから、イリオモテヤマネコやカンムリワシ、ヘビ類などの捕食動物への影響が懸念されます。石垣島では、オオヒキガエルをくわえたまま死んだサキシママダラが 5 例 報告されています(Kidera and Ota 2008)。オオヒキガエルが西表島に侵入して増えた場合、イリオモテヤマネコがこのカエルを食べようとして、同様に毒の被害にあうことが懸念されています(中島ほか 2005)。
仔ガエルを食べた家禽の死亡や、幼生の大量発生による飲料水汚染が指摘された例があります。
また、本種は、病原性寄生虫である広東住血線虫の宿主となります。
オオヒキガエルが生息している大東諸島や石垣島から沖縄島へ運ばれる物資が到着する港湾などの周辺において、侵入監視モニタリングを行っています。2023年度には、那覇新港周辺で5個体、泊港で1個体が捕獲されましたが、定着は確認されていません。オオヒキガエルの侵入監視のため、港湾の事業者や近隣住民への普及啓発を強化し、目撃情報の収集に努めています。
大東諸島や石垣島において、オオヒキガエルの捕獲、生息状況調査、効率的な捕獲手法の開発等を行っています。
2023年度には、オオヒキガエルが物資に混入することを防ぐため、南大東島および石垣島浜崎町の港湾において、港湾域内への侵入防止柵を設置しました。
① 資材にまぎれて移動させない
オオヒキガエルは、とくに工事等の資材などにまぎれて、他の島へ運ばれると考えられています。石垣島や大東諸島から物資を移動させる際は、そこにオオヒキガエルがまぎれこんでいないか、よく確認するようにしてください。
② 目撃情報の提供
対策を実施するうえで、侵入を早期に発見することは重要となります。石垣島や大東諸島以外の島においてオオヒキガエルらしきカエルを見かけたら、写真と共に、いつ?どこで?何匹?といったような情報を、本ホームページの外来種情報フォームにお寄せください。
「オオヒキガエル見つけたらすぐに連絡を!」
PDF版ダウンロードはこちら。
- 沖縄県外来種対策行動計画に基づくオオヒキガエル 防除計画
- Kidera N. and Ota, H. 2008. Can exotic toad toxins kill native Ryukyu snakes? Experimental and field observations on the effects of Bufo marinus toxins on Dinodon rufozonatum walli . Current Herpetology 27: 23-27.
- Kidera, N., Tandavanitj, N., Oh, D., Nakanishi, N., Satoh, A., Denda, T., Izawa, M. and Ota, H. 2008. Dietary habits of the introduced cane toad Bufo marinus (Amphibia : Bufonidae) on Ishigakijima, southern Ryukyus, Japan. Pacific Science 62(3): 423-430.
- 中島朋成・戸田光彦・青木正成・鑪雅哉. 2005. 西表島におけるオオヒキガエル対策事業について. 爬虫両棲類学会報 2005(2): 179-186.
- 千石正一・戸田光彦. 2019. 爬虫類・両生類 . 自然環境研究センター編 , 最新日本の外来生物 . Pp. 89-137. 平凡社 , 東京.
- 八重山農林高等学校生物部. 2002. 石垣島に生息するオオヒキガエルの研究II. 沖縄生物教育研究会会誌