外来種図鑑

沖縄県は、県内の生態系や、県民の生活・社会活動への影響が大きい
以下の外来種について、重点的に対策をとっています。

オオヒキガエル

Rhinella marina

分類:
両生綱 無尾目 ヒキガエル科
和名:
オオヒキガエル
学名:
Rhinella marina
英名:
Cane toad、Marine toad、Giant toad
原産地:
中米~南米北部
指定項目:
重点対策種(沖縄県)、特定外来生物・緊急対策外来種(環境省)

※本種は特定外来生物のため、移動や飼育は禁じられています。


形態・生態

中米~南米北部原産で頭胴長9 ~15 cm(最大24 cm) の大型のカエルです。耳の後ろに発達した耳腺(毒の分泌線)を持ちます。カエルとしては乾燥に強く、サトウキビ畑など、人家近くの開けた場所に生息します。周年繁殖し、水たまりや池などに、 8000~25000 個の卵を含むひも状の卵塊を産みます。オタマジャクシは、1 ヶ月程度で上陸し、孵化後約半年で性成熟します。オスは「ボボボ・・・」と鳴きます。


沖縄への侵入経路と分布

原産地は中米から南米北部です。サトウキビの害虫駆除のため、西インド諸島やハワイ、オーストラリアなどに持ち込まれて定着しています。石垣島と北大東島・南大東島で定着しています。国内ではほかに小笠原諸島に生息しています。沖縄島・鳩間島・西表島では駆除されました。西表島などに再度侵入するおそれがあります。
●与那国島で1個体が発見・駆除されました(2021年)。

最近の捕獲記録

沖縄島(浦添市)
2011年に発見、2017年までに駆除

西表島
2000年に発見、2007年までに駆除
2017年・2020年にも発見・駆除

鳩間島
1998年に発見、2005年までに駆除

与那国島

2021年に発見、駆除

拡散のしかた

サトウキビ畑の害虫駆除を目的とした持ち込みと、その後の自力による分布拡大(北大東島・南大東島・石垣島)。教材としての持ち込み(鳩間島)。西表島で発見されたものは、工事用の資材などに紛れて石垣島から運ばれたと考えられています。


生態系と私たちの生活への脅威

①生態系

アリ類をはじめとする昆虫類やそのほかの小動物をどん欲に食べます。石垣島では、コガタノゲンゴロウやヤエヤマネブトクワガタなどを捕食していたことが報告されています(八重山農林高等学校生物部 2002; Kidera et al. 2008)。耳腺の分泌物には、心臓に作用する毒が含まれます。石垣島では、オオヒキガエルをくわえたまま死んだサキシママダラが 5 例 報告されています(Kidera and Ota 2008)。オオヒキガエルが西表島に侵入して増えた場合、イリオモテヤマネコがこのカエルを食べようとして、同様に毒の被害にあうことが懸念されています(中島ほか 2005)。

②生活

水源地で幼生の繁殖すると、水質の悪化が起きます。また本種は、病原性寄生虫である広東住血線虫の宿主となります。


沖縄県の対策

環境省では、八重山諸島におけるオオヒキガエルの駆除を行っています。


県民の皆様ができること

① 資材にまぎれて移動させない

オオヒキガエルは、とくに工事等の資材などにまぎれて、他の島へ運ばれると考えられています。石垣島や大東諸島から物資を移動させる際は、そこにオオヒキガエルがまぎれこんでいないか、よく確認するようにしてください。

② 目撃情報の提供

対策を実施するうえで、侵入を早期に発見することは重要となります。石垣島と大東諸島以外で、工事現場や港、埋め立て地周辺などでオオヒキガエルらしきカエルを見かけたら、写真と共に、いつ?どこで?何匹?といったような情報を、本ホームページの外来種情報フォームにお寄せください。

目撃情報を提供する(外来種情報フォームへ)→


ギャラリー
引用文献
  • Kidera N. and Ota, H. 2008. Can exotic toad toxins kill native Ryukyu snakes? Experimental and field observations on the effects of Bufo marinus toxins on Dinodon rufozonatum walli . Current Herpetology 27: 23-27.
  • Kidera, N., Tandavanitj, N., Oh, D., Nakanishi, N., Satoh, A., Denda, T., Izawa, M. and Ota, H. 2008. Dietary habits of the introduced cane toad Bufo marinus (Amphibia : Bufonidae) on Ishigakijima, southern Ryukyus, Japan. Pacific Science 62(3): 423-430.
  • 中島朋成・戸田光彦・青木正成・鑪雅哉. 2005. 西表島におけるオオヒキガエル対策事業について. 爬虫両棲類学会報 2005(2): 179-186.
  • 千石正一・戸田光彦. 2019. 爬虫類・両生類 . 自然環境研究センター編 , 最新日本の外来生物 . Pp. 89-137. 平凡社 , 東京.
  • 八重山農林高等学校生物部. 2002. 石垣島に生息するオオヒキガエルの研究II. 沖縄生物教育研究会会誌